今やファッションとして日常に根付いているグラミチだが、ルーツは紛れもなくクライミングにある。それは、1970年代に“ストーンマスター”と呼ばれた伝説的ロッククライマー、マイク・グラハムによるクライミングパンツに端を発するブランドだからだ。本連載では、クライミングに心を掴まれたクライマーたちのメンタリティやライフスタイル、クライミングとの向き合い方に迫る。改めてグラミチの原点を辿る道標には、図らずも今を生き抜くエッセンスが内包されていた。
ジャン・エラネ
ジャン・エラネ
NAME
ジャン・エラネ
TITLE
酒屋
AREA
ロクボク/万珍酒店
PROFILE
1997年生まれ。パリ生まれ東京育ち。酒類の輸入代理店に勤務しながら、休日は岩場へと足繁く通うクライマー。仲間と共に、銀紋倶楽部という名でSNS等を通してクライミングの楽しさを等身大のスタンスで発信している。一番好きなビールはチェコのピルスナーウルケル。
丹精な顔立ちだけでなく、言葉使いも丁寧。醸し出すその柔らかでい雰囲気は、人が人らしい姿を晒せる酒場で培われたものなのか。酒屋を本職としながら、イタリア人のクライマー夫婦から譲り受けたというロックトリップ仕様の軽バンで、休日は岩場へ行くのが日常だというジャンさん。軽快な足どりで歩む酒屋として、そしてクライマーとしての自然体を追った。
―――クライミングを始めたきっかけは何ですか?

2020年のコロナ禍くらいからですね。子供の頃からずっとバスケをやっていて、大学ぐらいまで真剣に取り組んでいたんですが、社会人になって時間がそんなに確保できなくなったのと、コロナ禍で体育館が使えなくなってしまって。ただ、体を動かすのは好きなので、高校の頃にほんのちょっとだけクライミングをやったことを何故かふと思い出して、久々にやってみたらすごくハマったんです。コロナ禍でも、クライミングは密を避けて一人で楽しむこともできたので、タイミング的にはドンピシャでしたね。
―――バスケはチームスポーツで、クライミングは個人スポーツに近いと思います。何か違いは感じましたか?

バスケはドリブルで相手をぶち抜くのが快感でした。でも、僕は小心者なのでちょっとしたミスでチームの流れが悪くなるのを気にしちゃうタイプで。一方、クライミングは自分が登っている最中に何かミスをしたとしても、それは自分にしか影響しません。ただ、クライミングも周りの仲間と応援し合ったり、誰かが登れたことを自分のことのように喜べるという、個人スポーツだけどチームスポーツ的な側面もあって、それが心地いいんです。

―――ジャンさんにとっては、良いとこどりだったんですね。ジムだけでなく、外岩にも行くんですか?

ジムに行き始めて1年ぐらい経った頃から、徐々に外岩にトライするようになりました。フレンチインターナショナルスクールの先輩で、現在はモデル活動を行っているベンとクライミングジムで再会して、一緒に登るようになりました。ベンのモデル友達の影山君だったり、他の人達も紹介してくれて、今はその仲間達と一緒にロックトリップを楽しんでいます。
―――仲間とともにクライミングを楽しむジャンさんですが、ボルダーだけでなく最近はリードにもハマっているとか。

そうなんです。リードだけでなくマルチピッチクライミングや沢登りなどもやっています。子供が生まれて登る時間が少なくなったので、課題をクリアする喜びが大きいボルダーよりはアドベンチャー的なクライミングをしたいと思うようになりました。ボルダーだと登っても景色はそれほど変わりませんが、リードなら簡単なルートだったとしても30メートルも登れば、そこには絶景が待っているので。

―――今日も本来なら小川山に行く予定だったのですが、天候の兼ね合いもありロクボクでの取材となりました。初めて訪れたと思うのですが、どうでしたか?

知人からも話はよく聞いていたので、とても興味はありました。天候もあって今日お世話になることになったんですが、逆に来られて良かったです。廃校の体育館を活用したジムで、木の温もりを感じられる空間がめちゃくちゃ気持ちいい。登っている人達も穏やかでフレンドリーなのも印象的。東京だともちろんジムによりますが、結構殺伐とした雰囲気だったりもするので、今日は初めて会った人が隣で応援してくれたりして、そういう空気感がいいなと。
後は、ボルダーだけじゃなくてリードがあるのもいいですね。都内にもリードができるジムはありますが、この規模と高さは特別だと思います。

―――今後挑戦してみたいクライミングがあれば教えてください。

今後はアルパインクライミングにもトライしたいです。日常から離れて自然と遊ぶことがただただ好きなので、何かに固執することなく、山に入っていろんなクライミングと触れ合っていきたいです。
―――グラミチとの出会いについて教えてください。

中学生くらいのときスケボーをやっていて、先輩が穿いているのを見てカッコいいなと思ったのが最初です。当時、それがグラミチのパンツだという認識はなかったのですが、ウェビングベルトの先端に施されたランニングマンが印象に残っていて、後にそれがグラミチというブランドのものだと知りました。実際自分が穿くようになったのは、クライミングを始めてからですね。

―――では、基本的にはクライミング用として愛用しているんですか?

いや、実はもうほぼ僕のパンツの9割9分9厘はグラミチです。5本くらいをローテーションしていて、最初に穿いたブラウンのグラミチパンツは今もバリバリ現役。クライミングだけでなく、日常でも愛用しています。元々少ない服を大切に着続けるのが好きで、グラミチのパンツは耐久性も申し分ないし、ゆったりとしたシルエットも好み。グラミチのグラフィックTシャツも一軍で、この間私服からジム着に着替えた際、友達に「グラミチからグラミチに着替えてるじゃん」って言われたくらい(笑)。

―――上下ともに着続けてくれているんですね。とても嬉しいです!

グラミチの広告塔みたいになってますよね(笑)。でも、本当に穿き心地や着心地が最高なので、お世辞抜きに大好きなブランドです。いつもはグラミチパンツですが、外岩でリードクライミングをするときは、細身のシルエットで化繊のものを穿いています。軽くて伸縮性があり、ハーネスを装着するとき腰回りの生地がもたつかないのがいいんですよね。
以前、フランスの岩場を登っていた際、現地のクライマーに「カッコいいパンツだね!」って褒められたのもいい思い出です。
―――ジャンさんが酒屋になったきっかけを教えてください。

フランスの大学に通っていたときにビールに興味を持ったんです。フランスはビールが有名ではないですが、チェコやドイツ、ベルギーにイギリスといったビール大国に囲まれていて、街中のスーパーには珍しいビールがずらっと並んでいました。買い物に行く度、飲んだことのないビールを1本ずつ買って飲むことを繰り返して、ちょっとずつ知識が増えていきました。当時、特にやりたいことがなかったので、好きなことを仕事にしてみようと思い、帰国後ビアバーのバーテンダーになりました。そして、現在は酒類の輸入代理店に勤務しています。世界のビールだけでなく、名酒との出会いを求めて、日本各地を自分の足で巡っています。

―――それでは、この万珍酒店さんとは仕事でのお付き合いがあるんですか?

直接関係があるというより、万珍酒店の醸造責任者として勤務しているミノルさんと親交があるんです。最初に働いていたビアバーの周年イベントでオリジナルビールを作る機会があって、そのときにブルワーのミノルさんとご一緒させて頂いたんです。

―――そうだったんですね。万珍酒店のクラフトビールはとても酒類が豊富ですね!

僕も、小川山に来るときは帰り道に寄らせてもらっています。車なのでもちろん家に帰ってからのお楽しみですが(笑)、どれもめちゃくちゃ美味しいですよ!
―――最後に、今後の目標があれば教えてください。

実は、年末ぐらいに会社を辞める予定でして、角打ちができる酒屋をやりたいと思って動いてるところなんです。国内外から選りすぐったクラフトビールだけでなく、ワインや焼酎等も取り揃えてご提供できればと思っています。

―――そうなんですね! オープン、楽しみにしています。ちなみに、お店の名前が決まっていれば教えてください。

「KNOT(ノット)」。生産者と消費者、そしてお客さん同士がギュッと繋がるクライミングロープの結び目のような酒屋にできれば、という想いを込めています。

Photo/Yu Tabata(NewColor inc)

ARCHIVES

このページの先頭へ