多様なカルチャーに精通するショップオーナー、クリエイターの証言からGramicciの多面的な魅力を紐解くインタビュー連載『Stance』。第11回は、ALWAYTH(オルウェイズ)のディレクターを務める“し”さんをフィーチャー。その多くが謎に包まれたブランドの成り立ち、ディレクターとしてのフィロソフィーを掘り下げつつ、リリースを間近に控えたGramicciとALWAYTHで共作したカプセルコレクションについても話を聞かせてもらった。

ー 謎な部分も多いALWAYTHですが、いつからやってるんですか?

 

:2016年に始めたっぽいので、今年で10年目ですかね。

ー 10年というと節目っぽくも感じますが、続けてみていかがですか? マイペースというか、あまりペースを変えずに続けているように見えます。

 

:始めた当初から今に至るまで、ずっとマイペースですよ(笑)。無理のない範囲でやりたいんです。作りたいものがあったらその都度作ろうかなって感じですかね。

 

ー その“作りたいもの”っていうのは、どういう時に発生するんですか?

 

:なんでも広く浅く知りたがってしまうところがあって、常にいろんなものに興味があるんですよね。街で気になる自転車があればメモ代わりにスマホで写真を撮ったり、スーパーで見かけたパスタのパッケージの色味が気になったら買って帰ってなんとなく家に置いておいたり。古着屋さんも大好きでよく行くんですけど、「なんか良いな」と思ったものはとりあえず買って手元に置いておくようにしているんです。そういうのを箱に分けて整理して持っておくと、だんだんと繋がっていくというか。

ー 繋がっていく。

 

:いろいろと手元に置いておくと「あのジャケットのポケットのディテールが良かったな」とか、「あのパッケージの色の組み合わせが斬新だったな」とか、アイデアのストックが脳内に溜まっていきますよね。そうするとだんだんと「何か作ろうかな」という気分になってくるんです。

 

ー 「買う」という行為はリサーチでもあると。

 

:そうですね。やっぱり洋服って、実際に着てみないと分からないところがあるじゃないですか。気になるモノがあったらとりあえず買って着てみて、「ここはこうじゃないほうが良いな」とか、「色は最高なんだけど素材がちょっとな」とか、ずっとやってます。失礼ですよね(笑)。

ー ALWAYTHはさまざまなブランドとコラボレーションをしていますが、その際にもそういう作り方を?

:そうそう。僕のやり口はそれしかないから(笑)。パターンや縫製のことはいまだによく分からないし、そうやって手持ちのものからサンプリングしたり、複数の引用元を組み合わせたりしながらやっています。

 

ー 引用元があるにしても、やっぱりオリジナルには見えますよ。

 

:そう言ってもらえると嬉しいです。ただ、コラボレーションの相手とは全然関係ないブランドから引用しているので、そういった意味では打ち合わせのときは緊張感があります(笑)。

 

ー 確かに、コラボ先ブランドの過去のアーカイブとかからサンプリングしたら、ストーリー性もありますもんね。

 

:それも理解しつつ、せっかくならそのブランドにこれまでになかったものを作りたいし、ブランド単体だったら作られなかったであろうものを作りたい。そのために呼んでもらっているんだろうな、と思うようにしています。だから「これを実現できるんだったらやりたいです」ってちょっと強気で提案させてもらうこともあるんですけど、やらせてもらえることもあって、そういうときは「ラッキー」って思います(笑)。

ー では、今回のGramicciとのコラボレーションについてはどのように進めていったんですか?

 

:Gramicciとコラボレーションするのは今回で二度目で、前回はブランド側から声をかけてもらったけれど、今回は作りたいもののアイデアがあったから、僕の方から声をかけさせてもらいました。Gramicci、すごくかっこいいブランドになったじゃないですか。前回のコラボもすごく納得のいくモノができたし、また一緒にやりたいな、とずっと思っていました。

 

ー なるほど。全6型のコレクションですが、とある古着のキャップをもとに作ったそうですね。

 

:ずいぶん前にどこかの古着屋で買った古いキャップなんですけど、その色使いがすごく好きで気に入っていたんですよね。いわゆる8パネルのベースボールキャップで、4色のパネルになっているモノなんですが。

 

ー 全体的に、Gramicciとしてはあまり使われてこなかったカラーパレットだなと感じました。

 

:そうですよね。全体的にちょっと2000年代っぽい雰囲気というか。

ー いくつか抜粋してお聞きできたらと思うのですが、このパンツから詳しく聞かせてください。既存の型ではなさそうですね。

 

:これは、ALWAYTHで作っているパンツの仕様がベースになっていて、ウェビングベルトだったりはGramicciの仕様から踏襲させてもらっています。ベースのパンツは『CITY GUIDE PANTS』って名前を付けているんですけど、patagoniaの『MOUNTAIN GUIDE PANTS』のALWAYTH版って感じです。

ー こちらは? セットアップですね。

 

:フリースのセットアップで、着るとちょっとヤンキーっぽいっていうか。フロントのステッチワークがブロック壁をイメージしていて、Gramicciはクライミングがルーツなので、僕にとってのクライミングはブロック壁だなと(笑)。

ー では、こちらは?

 

:これは盟友でもあるMY LOADS ARE LIGHTと作っています。デザイナーの子が最近犬を飼い始めたらしいので、散歩のときに着るジャケットを作ろうって何気ない会話からできたモノです。

ー グラフィックTシャツもありますが、かなりALWAYTHな感じですね。これは何がモチーフに?

 

:青いやつはボルダリングのホールドです。ちょっと前に買ったホールドがたまたま雲の形に見えたんです。ALWAYTHのロゴマークの雲の部分に落とし込めそうだなと思っていて。

 

ー なぜホールドを持っていたんですか? あんまり個人が持っているものではないかなと思うんですが。

 

:どういう素材なのかが気になったんですよね。ボルダリングの専門店みたいなところで買いました。カラーや形もさまざまなんです。ブロック玩具のようでかわいいですよね。

ー GramicciらしさもALWAYTHらしさも感じるコラボレーションですが、“し”さんが考えるALWAYTHらしさってなんだと思いますか?

 

:意識しているわけではないんだけど、やっぱり色使いかなとは思います。僕としては自然なんですけど、日本人っぽくないカラーパレットってよく言われます。

 

ー それはすごく感じました。特にグラフィックに関して。

 

:じゃあ、やっぱりクセがあるんですね。色の組み合わせは“何かっぽさ”を意識しています。

ー ここでさっきおっしゃっていた“広く浅く”が効いてくるわけですね。

 

:そうそう。僕の中ではすごく重要なキーワードなんですよね。もうひとつ、“知ったふり”をすることも大事だと思っていて。

 

ー “知ったかぶり”ではなく?

 

:“知ったふり”ってのは僕のなかで、何か物事や作品を見たときに、作り方や成り立ち、ひらめきなど制作者の気持ちを想像してみること。“知ったかぶり”はそれよりも浅い部分、表層だけを掬い取る行為って感じがします。“知ったかぶり”よりは断然“知ったふり”派です。

ー そもそもご自身の嗜好として、そういう想像力を掻き立てるようなものが好き?

 

:そうですね。たとえばステファンが作った服とかも絶対に“何か”がベースにありそうじゃないですか。「どの辺から引用しているんだろう?」っていつもすごく気になっています。モノづくりにおいて、何から引用するかってすごく“その人”が出るから。

 

ー これまでに何をインプットしてきたか、その人の歴史のようなものが出ますよね。

 

:そういう引き出しはたくさんあるに越したことはないと思うんですよね。複数から引用していると、いざ自分が何か作ろうとしたときに、何かっぽいけど何でもないモノになったりもするし。

ー 確かに、狭く深く追求する作り手さんだと、引用元が照合できちゃったりもします。

 

:僕自身、大衆っぽさというか、量販されているモノがすごく気になるんです。一見して「なんかいいね」ってなるようなちょうど良いモノ。そういうのを目指しています。僕が作る洋服は、オシャレをするために着るものというよりは、その人の空気感を醸し出すものになれば良いなって思うんですよね。

Graphic Design&Photo_Leo Arimoto
Text&Edit_Nobuyuki Shigetake

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