今やファッションとして日常に根付いているグラミチだが、ルーツは紛れもなくクライミングにある。それは、1970年代に“ストーンマスター”と呼ばれた伝説的ロッククライマー、マイク・グラハムによるクライミングパンツに端を発するブランドだからだ。本連載では、クライミングに心を掴まれたクライマーたちのメンタリティやライフスタイル、クライミングとの向き合い方に迫る。改めてグラミチの原点を辿る道標には、図らずも今を生き抜くエッセンスが内包されていた。
関川愛音
関川愛音
NAME
関川愛音
TITLE
スポーツクライマー
AREA
JAZZY SPORT MORIOKA/THE STONE SESSION
PROFILE
2007年生まれ。青森県出身。2019年「第2回ボルダリング小学生競技大会」での全国優勝を皮切りに、中学進学後もあらゆる大会で表彰台に。現在はワールドカップ等活躍の場を海外まで広げる。ダイナミックさと流れるようなコーディネーションを併せ持つ気鋭のスポーツクライマー。
クライミングとは関川さんにとってどんな存在ですか? 直球の問いにすぐ答えが出ず、数秒考えたうえでも、答えは出なかった。それは、ひとつひとつ、目の前の壁と対峙することだけにフォーカスしているからなのかもしれない。論より証拠。多くを語らず、闘志を内に秘めながら、ただひたすら頂を目指す姿がそこにあった。
―――はじめに、クライミングを始めたきっかけを教えてください。

幼稚園のとき、サッカーを習っていたんですが、お母さんが練習の待ち時間にランニングをしていた際、たまたまクライミングジムを見つけたんです。先にお母さんが行くようになって、私もやってみたくなり、連れて行ってもらったのがクライミングとの出会いです。

―――お母さんが先にやり始めたんですね。

そうなんです。家から20分くらいのところにある「ノースロック」というジムで、そこで初めて登りました。すっごい楽しかったのを今でも覚えています。ジムが休みの日以外は毎日通うようになりました。最初はお母さんも一緒に登っていたんですけど、私に負け始めると“やる気がなくなった”って言ってやめちゃったんですけど(笑)。

―――めちゃくちゃ負けず嫌いですね(笑)。小学生のころはサッカーも続けていたんですか?

サッカーは小学6年生まで続けていました。お母さん的には何か一つに絞るのではなく、いろんなスポーツをやってほしいという想いがあったので。

―――小学生のころからパーソナルトレーナーもつけていたと伺ったのですが、スポーツに関してお母さんは熱心だったんですね。

そうかもしれません。小学3年生のころからパーソナルトレーナーについてもらい、週1回の頻度で体のメンテナンスをしていて、今も同じトレーナーの方にお世話になっています。

―――サポートを受けながらスキルを磨き、小学6年生のときには小学生大会で優勝するに至りました。そのときにはもう、この道で生きて行こうと決めていたんですか?

小学2年生のとき、初めて岩手の県大会に出場しました。競うのが楽しい反面、負けた悔しさも同じくらいあって。同年、開催されたノースフェイスカップに出場した際、全国から集まった強い子たちを目の当たりにして、もっと強くなりたいという意識が芽生えました。そしてオリンピックで優勝したいって思いました。今思えばその時スポーツクライミングはオリンピック種目ではなかったのですが...(笑)

―――大会に初出場したときから、意志が固まっていたんですね。ご自身のクライミングスタイルで意識されていることはありますか?

ダイナミックな動きや連動性のある動きが自分のスタイルですが、そのスタイルに加えて弱点を無くすように取り組んでいます。ウェイトを使った加重した筋力トレーニングではなく、試合で想定される動きを壁の中で再現して自重でトレーニングする事も自分のスタイルだと思っています。

―――関川さんは芯がしっかりしているので、大会等に出る際もあまり緊張しないように思います。

普通に緊張します(笑)。だから、平常心であることを常に心掛けています。いつもの練習でやっている通り目の前の課題に集中して戦うことができれば、必ず勝てると信じています。
―――JAZZY SPORT MORIOKA/THE STONE SESSIONに通うようになったのはいつですか?

初めて来たのは小学2生くらいのときですかね。岩手の運動公園での大会が終わった後に、近くにあるのをお母さんが知っていて。伊藤ふたば選手もいるっていうのも聞いていたので、行ってみたいなと思っていました。それから、お母さんが車で送ってくれるようになり、次第に通う頻度が増えていきました。

―――今ではホームジムとなっていますが、改めてJAZZY SPORT MORIOKA/THE STONE SESSIONの特徴を教えてください。

基本的には選手向きの印象です。もちろん楽しむこともできるんですけど、自分にとっては課題と真剣に向き合える場所。高い強度の課題で練習できるので、自分にとっては無くてはならないジムです。

―――まぶし壁があるので、課題をアレンジしながら取り組める部分も魅力だと思いますが。

そうですね。そのうえ、課題が難しかったり簡単すぎたりすると、その場でホールドを付けたり外したり、移動したりしてくれます。こんなに柔軟性のあるジムは他にはないと思います。
―――グラミチとの思い出についてお聞きしたいです。

子供のときから常に動き回っていたので、基本的にはジャージを穿いていたんですが、お母さんがクライミングにも穿けるし、お洒落着としても穿けるからってストレッチの利いたグラミチのズボンを買ってくれました。

―――そうだったんですね。今回、穿いてみて改めてどうですか?

動きやすいのはもちろんですが、色もカワイイです。最近は、服にも興味が湧いてきたので私服としても穿きたいなと思います。
―――JAZZY SPORT MORIOKA/THE STONE SESSIONの店主であるCHOKUさんのサポートを受けつつ、トレーニングを行っているかと思います。

小学生のころから課題を作ってくれたりしていましたが、本格的に見てくれるようになったのは中学生になってからです。その頃から、ふたばちゃん用のトレーニング課題をアレンジしてくれたり、メニューを組んでくれるようになりました。

―――普段はどんな話をするんですか?

本当にクライミングの話しかしないですね。CHOKUさんが常に課題を研究してくれているので、大会毎に細かく改善点を話し合います。そこから短期的と長期的に最適なトレーニング内容を導き出すというプロセスを繰り返す。ここまでやってくれる人はいないと思います。

―――意見がぶつかったりはしないんですか?

勿論、意見が食い違ったりする時もあったり、自分の意見を伝える事がうまくできない時もあります。そんなときは、話し合う時間を設けて、最後は一緒の方向を向くようにします。私はあまり喋る方ではないですが、それでも対話を怠らないことが目的に早く近づくためには必要です。

―――CHOKUさんはどんな存在ですか?

強くしてくれる人。だから、信じてトレーニングしています。
―――最後に目標を教えてください。

2028年に開催されるロス五輪で金メダルを取ること。そのために、それまでたくさんある大会も、全部勝ちに行きます。とにかくずっと1位であり続けたいんです。

―――目の前の壁を常に1番で乗り越えて行く。今、この瞬間が大事なんですね。

目の前のことで精いっぱいだし、今を一生懸命やることに夢中で、先のことは、何も考えてないです。
選手を終えたら何がしたい?ってたまに聞かれることがあるんですが、ちょっとイラッとしちゃった時もあるんです(笑)。
Photo:Kanta Nakamura(NewColor inc)

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