1982年、カリフォルニア州・ヨセミテの岩から誕生。確かなスペックと西海岸由来のレイド・バックなムードも手伝ってか、スケーターやサーファー、ヒッピーが好んで着用するなど、時代とともにさまざまなカルチャーと結び付いていったGramicci。アウトドアやクライミングはルーツであり、軸であるが、あくまで一側面。また別の側面からGramicciを形作るのはサブカルチャーにほかならない。本連載では、多様なカルチャーに精通するショップオーナー、クリエイターにインタビューを敢行。ブレない姿勢と心構え、自らのスタンスで立つ彼ら彼女らにとってGramicciはどのような存在なのだろう? 第5回は、オーストラリアのセレクトショップ・108WAREHOUSEの面々に話を聞かせてもらった。
双子の兄弟であるエドウィンとエドワード、ハシントの3人のオリジナルメンバーで2019年にオーストラリアの大都市・シドニーでオープン。ユーズドアイテム、ローカルブランドを中心に、ジャパニーズブランドからインターナショナルブランドまで、独自の審美眼によってキュレーションされたアイテムが多数並ぶ。

ーよろしくお願いします。お店の成り立ちから教えていただけますか?

 

エドウィン:よろしく!声をかけてもらって嬉しいよ。108WAREHOUSEは2019年にハシントと僕と、僕の双子の兄弟のエドワードの3人でスタートしたんだ。当初は自分たちのワードローブを販売する、ユーズドオンリーのオンラインショップだったんだよ。僕たち3人は大学からの友だちで、学生時代からインターネット掲示板を通して洋服の売買をしていたので、それがそのまま自分たちのオンラインショップになり、そして実店舗になっていったようなイメージだね。

ーすごくいろんなテイストのものが置いてあるなと感じたんですが。

 

エドウィン:僕たちそれぞれが好きなものを集めてお店を作っているからだと思うよ。ストリートスタイルにカテゴライズされるアイテムが多くなっているけれど、そこに強いこだわりはないんだ。ライフスタイルを適切にサポートしてくれそうなものや、機能性、耐久性に優れたものを置くように心がけた結果、このようなセレクションになっている感じかな。

 

ーなるほど。店内では古着も取り扱っているんですね。

 

エドウィン:そう。108WAREHOUSEはいくつかのセレクションで構成されていて、COMME des GARÇONSやNeedlesなどのジャパニーズブランドを中心としたユーズドアイテム、それとPseushiやAgaric Flyなどのオーストラリアのローカルブランド、Gramicciなどのインターナショナルブランドの新商品、それと108WAREHOUSEのオリジナルアパレル、というふうに分けることができる。店内にはコーヒースタンド(108CoffeeStand)も併設していて、そこでは自分たちで焙煎したコーヒー豆や紅茶も販売しているよ。

ースタイルがあって素敵なお店ですね。108WAREHOUSEではGramicciの新商品も置いてくれていて、ユーズドのセレクションでも取り扱っているようですが、チームにとってGramicciってどのようなアイテムなんですか?

 

エドワード:まちがいなく、108WAREHOUSEにとって欠かせないブランドのひとつだろうね。オープンしてすぐの頃、僕たちはまだ一部の人にしか知られていないような、ニッチなスモールブランドばかりを取り扱っていたんだけれど、Gramicciを置き始めてからは、お店に来る人たちみんながGramicciのことを知っていて、認知度の高さ、ブランドとしてのスケールの大きさを改めて感じた。それに、僕ら自身もGramicciをリアルに愛用しているから、こうやって一緒にビジネスをできていることがすごく嬉しいし、お客さんたちからの良いフィードバックを受け取れることもすごく嬉しいよ。

ーGramicciはアウトドアにルーツがあるブランドですが、108WAREHOUSEは街で着る洋服を多く取り扱っているので、きっと独自の考え方があって置いているんだろうなと思ったのですが、どうでしょうか?

 

エドワード:確かに僕らはあまりアウトドアには親しくない。けれどもちろん、Gramicciの軸足がアウトドアにあることは理解している。だから、もっと大きな枠組みで考えて、毎日でも着ることができるライフスタイル・ブランドとして捉えているんだ。カジュアルにもドレスアップにも取り入れやすくて、穿き心地の良いパンツと良質なウエアをリーズナブルな価格で提供している、お客さんにも安心してオススメできるブランドだね。あとは長い歴史があるから、ヴィンテージのバイイングが好きな僕たちにもピッタリだよ。Gramicciのヴィンテージのショーツは常に探しているし、お店にもたくさん置いてるんだ。

ー108WAREHOUSEでは、Gramicciをどのように穿くことをオススメしていますか?

 

ハシント:僕たちが特に気に入ってるのは、オーストラリア限定でリリースされているワイドフィッティングの『GRAMICCI PANTS』。ルーズでリラックスしたスタイルが好きだから、普段のスタイルにも合わせやすい。シンプルでフィット感のあるTシャツとも抜群に相性が良いし、天候次第ではテクニカルなジャケットと合わせても良いよね。Gramicciのパンツの何が優れてるって、穿き心地がいいのに、どんな服装にも合わせやすいところだと思うんだ。革靴とボタンダウンシャツで合わせれば、夜のデートにだって着ていけるしね。

【EXCLUSIVE】WIDE PANT

Gramicciのアーカイブに現代のエッセンスを加えてアップデートした、ブランドのラインナップの中でも最もワイドシルエットなパンツ。ブランドのルーツであるクライミングシーンにおける機能性を残しつつ、ヒップと腿周り、膝から裾にかけてボリュームを持たせて現代のファッションにも馴染む一本に仕上げた。公式オンラインストア限定。

ー108WAREHOUSEのバックボーンになっているカルチャーってなんですか?多様なスタッフがいて、それぞれに好きなものや影響を受けたカルチャーがあると思うんですが、何かみんなに共通項はあるのかな、と。

 

ハシント:僕たちに共通していることでいうと、みんなとてもリラックスしていることかな。日頃から物事を深刻に考えないようにしているんだ。何事も自分が好きで、自分が楽しいと感じられることがもっとも重要だと思っていて、これは108WAREHOUSEのキュレーションにも反映されていると思う。音楽、食べ物、コーヒー、アート、本、着心地のいい服……これらは、僕たちにとっては刺激的なものであり、インスピレーションの源でもある。とにかく、108WAREHOUSEはひとつの文化で定義できるものではなく、僕たち3人と、手伝ってくれている仲間たちの興味と趣味の集合体なんだ。

ー確かに、お店のセレクションにもそのスタンスがよく出ていると思います。日本のブランドも取り扱ってくれていて、日本人として、誇りに思いました。

 

エドワード:僕たち3人は常に日本のブランドに関心があって、ブランドごとの背景にあるストーリーや文化にもとても興味があるんだ。

 

ーそれって何かきっかけがあったんですか?遠く離れた日本の情報は、自然に入ってくるものではないですよね。

 

エドワード:裏原ムーブメントの存在を本で知ったんだ。それ以来、興味を持って、日本のブランドについて深く調べるようになった。A BATHING APE、C.E.などのストリートブランドから、UNDERCOVER、COMME des GARÇONS、ISSEY MIYAKEなどのデザイナーズブランドまで。このあたりのブランドは、まだ108WAREHOUSEを立ち上げる前の大学生だった僕たちにとっ てはかなり高価だったから、中古でよく買っていたんだよね。2017年に初めてみんなで日本に訪れたときは中古のCOMME des GARÇONSを買い漁ったよ(笑)。中古品の買い物は本当にエキサイティング!何が見つかるか分からないからね。僕たちのスタイルは、ユニークな中古品を見つけることから発展していったんだ。

 

ーCOMME des GARÇONSのアイテムのバリエーションが特に豊富ですね。

 

エドウィン:僕たちはCOMME des GARÇONSの大ファンなんだ!HOMME、HOMME PLUS、SHIRT、Tricot、Robe De Chambre……さまざまなラインを楽しんでいるよ。僕たちが特に好きなのが、田中啓一がデザイナーをしていた、1990年代初頭から2000年代初頭のCOMME des GARÇONS HOMME。シルバーのラベルを見れば、この時代のものだと一目瞭然だよね。田中さんがデザイナーをしていた頃のシャツは、着用したときのフィット感や着心地が独特ですごく興味深い。仕立ても良くて、クラシックで着やすい。それに、シンプルなアイテムにどういった変化を加えると格上げされるのかを知ることができて、すごくエキサイティングなんだ。

ーなるほど。ところで“ヴィンテージ”ではなく“中古品”に関心があるんですね。

 

エドウィン:うん。僕たちは“ヴィンテージ”と“中古品”を分けて考えている。そうしたら、異なる時代のすべての服を平等に評価して、楽しめるでしょ?

 

ーたしかに、そうですね。ちなみに“ヴィンテージ”と“中古品”をどういうふうに区別しているんですか?

 

エドウィン:“ヴィンテージ”と“中古品”の明確な違いは、“中古品”には現行品も含まれていることかな。ただ単に、過去に誰かが所有していたものだから“中古品”と呼んでいるけれど、作られた年代とかは関係なく、面白いと感じられたら5年前のモノだって仕入れるし、2年前のモノだって仕入れる。もしも“ヴィンテージ”だけをキュレーションするとしたら、作られてから少なくとも2〜30年以上が経過したものに絞って仕入れをしなければならないでしょ?そうやって限定的な視点を持つことは僕らのスタンスには反するんだ。僕たちは現行品も好きだし、新しいものも好きだから、それらを一緒にキュレーションすることで、お客さんにも僕たちが何を大切にしているかが伝わるんじゃないかなって思うんだ。

 

ー3人の中古品への愛がすごく伝わってきました。

 

エドワード:2019年にお店を始めたときは中古品だけを取り扱っていたしね。でも、僕たちにはもっと大きなビジョンがあったから、自分たちのオリジナルのアパレルを作ったし、自分たちの好きなブランドに「108WAREHOUSEで置かせてほしい」と声をかけた。中古品は、調達するのに制限もあるし、時間がかかることが多い。それに、僕たちはオリジナルのアパレルを通して自分たちのスタイルをアピールしたかったんだ。だから、いろいろなスタイルが混在していることは108WAREHOUSEとしての進歩と、僕たちのスタイルの発展を象徴している。僕たちは、ずっと自分たちの感性を信じているし、セレクトと買い付けの基準にしているんだ。

ー「大きなビジョン」とは?

 

エドウィン:オンラインストアからスタートした僕たちにとって、1つめの大きなビジョンは、物理的なスペースを作ることだった。コミュニティと言ってもいいかもね。108WAREHOUSEが、僕たちと同じような考えを持つ人たちの拠点になると良いなと思ったんだ。2つめが、僕らが好きな中古品の良さを引き立ててくれる現行のブランドをショップに並べること。そして3つめが、その横に自分たちのオリジナル商品を置くこと。

 

ー全て実現しているんですね!すごいことだと思います。

 

エドウィン:ありがとう!自分たちのスペースを持つことで、友人たちや一緒にビジネスをしているブランドのクルーをもてなすことができるようになったし、彼らの素晴らしい作品を紹介する場所としても機能している。それが本当に嬉しいんだ。オリジナルのブランドを作ることも、僕たちにとって素晴らしい経験だった。自分たちの表現力を余すことなく発揮して好きなアイテムを作ることができたし、そのことによって世界中のクールなショップとつながることができた。僕たちが尊敬するショップに僕たちのオリジナルアイテムが置かれているのを見るのは本当に最高!日本だと、札幌のWAKEと横浜のOn The Way Storeに置いてあるよ。今後もいろんなお店に置いてもらえたら嬉しいね。

 

ーコラボレーションって、自分たちでお店やブランドを運営する醍醐味のひとつですよね。

 

エドウィン:コラボレーションは僕たちとしてもすごく大事にしているよ。108WAREHOUSEがブランドとしてしっかりと確立できていなければ、コラボレーションはできなかったと思う。最初はローカルのアーティストやカフェ、レストランとのコラボレーションからスタートして、今ではNEW ERAのようなインターナショナルブランドとも対等にコラボレーションアイテムを作れるようになった。気の合う仲間たちとのコラボレーションは本当に刺激的だし、何度やっても興奮するね。これから先もたくさんのブランドと一緒にビジネスをすることが、今後の108WAREHOUSEの大きなビジョンなんだ。

Photo_Daiki Endo
Graphic Design_Misato Imura
Text&Edit_Nobuyuki Shigetake

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