今やファッションとして日常に根付いているグラミチだが、ルーツは紛れもなくクライミングにある。それは、1970年代に“ストーンマスター”と呼ばれた伝説的ロッククライマー、マイク・グラハムによるクライミングパンツに端を発するブランドだからだ。本連載では、クライミングに心を掴まれたクライマーたちのメンタリティやライフスタイル、クライミングとの向き合い方に迫る。改めてグラミチの原点を辿る道標には、図らずも今を生き抜くエッセンスが内包されていた。
島谷尚季
島谷尚季
NAME
島谷尚季
TITLE
プロロッククライマー
AREA
ロックランズ
PROFILE
1996年。千葉県千葉市出身。小学生のころクライミングと出会い、その魅力に開眼。スポーツクライミング日本代表も経験するなどその実力は本物だ。2020年には“岩場の文化を今よりもっと日本に浸透させる”を信条に3人組のクライミングチーム「ROKDO」を結成。YouTubeやInstgramを通じて、日々の活動を配信している。
今年6月に、南アフリカにある世界有数のクライミングエリア「ロックランズ」へ37日間に及ぶロックツアーを行ったプロロッククライマーの島谷尚季さん。“一生クライミングで食っていきたい”と静かながら力強い眼差しで語る島谷さんが見据える先とは?
―――クライミングを始めたきっかけはなんですか?

小学4年生くらいのときですかね。もともと両親が登山をやっていて、たまたま週末に、津田沼にあるアウトドアショップ「ヨシキスポーツ」についていったんです。そこは、お店の外に体験用の小さな壁があって、登ってみると……めちゃくちゃ楽しかった。それから毎週のように通ってひたすら登り続けているうちにクライミングチームの存在も知り、「千葉ジュニアチーム」に所属することに。大会に出たりと結構本格的な感じだったので、そこで腕を磨きました。確かボクは「千葉ジュニアチーム」の一期生ですね。練習は、幕張総合高校にある15mくらいの壁がベースで中学3年間もずっと所属していました。ちなみに、ボク以外に同じ中学でクライミングしている人は誰もいなかったです(笑)。

―――小学生からすでにどっぷりだったんですね! その後もブレずにずっとクライミングを?

はい。それこそ、高校は幕張総合高校に推薦で行きました。ワンダーフォーゲル部という部活があって、部内は登山とクライミングの2本柱になっています。部活でも、相変わらず毎日4時間くらいはひたすら登り続けていました。他のことに興味もなかったし、クライミングしてるときが一番楽しかったので。ただ、チームで動くとか、群れるのがどうしても苦手で、壁が埋まってしまうときは、ジムに逃げて練習してましたけど(苦笑)。その成果もあって、年に一度クライミングの国体があるのですが、1年生と2年生のときには優勝できました。

―――ストイックにクライミングと向き合い続けていたんですね。もちろん、大学でもクライミングは続けていたんですよね?

そうですね。語学系の大学に進学したんですが、当時、ワールドカップに出る費用が自腹だったので、ジムでバイトをしながら、クライミングも基本的にジムで続けていました。ただ、コロナ禍の影響もあり、ジムも潰れちゃったり、コンペを辞めて本格的にアウトドアクライミングに没頭しようと思っていたタイミングも重なって「ROKDO」を結成し、今に至ります。

―――今では岩場が主流になっているんですね。

もう、岩場のほうが全然好きですね(笑)。小学生のころから「DOSAGE」というアウトドアクライミングムービーに影響されていましたし、岩場は初登したりすると後世に名を刻めますからね。また、インドアクライミングと違って、コンディションに左右されるのでその場の対応力を問われるのも醍醐味だと思っています。
―――島谷さんにとってクライミングとはなんですか?

自由。ルールも存在しなければ、どういうスタイルで登るかも自分次第です。年齢的には32、3歳くらいがピークなので、今のうちにやれることはやっておきたいですね。
―――南アフリカのロックツアーお疲れさまでした! 島谷さんたちが行った「ロックランズ」について教えてください。

南アフリカの首都ケープタウンから車で3時間程南下して行ったところにあり、世界中から有名クライマーが集まるクライミングエリアです。ボクらが行ったときも「DOSAGE」に出演していたリビングレジェンドのポール・ロビンソンがいたんです! でも、めちゃくちゃ緊張しちゃって、写真撮るのは忘れてしまいました(苦笑)。

―――そうだったんですね(笑)。ちなみにお目当ての課題とかはあったんですか?

「ロックランズ」自体がボクの挑戦しているハイボルダーな課題が多いのですが、そのなかでも10mくらいある「フィニッシュライン」という有名課題にトライしました。1日目は、ムーブをバラすことに費やしたのですが“これは登れる課題だな”ってそのときは思ったんです。でも2日目、実際ロープを使わずに登り始めると、徐々に恐怖心が芽生えてきて……。案の定、一番難しいカクシンの一歩手前で、左足がスリップし、落下してしまいました。岩に手を叩きつけられたのと同時に、聳え立つ岩を前に自然の怖さを叩きつけられました。そこから少しトラウマになり、再トライまで7日間くらいかかりました(苦笑)。

―――大事に至らなくてよかったですね。

自然が相手だと思い通りに行かない。だからこそ、自然との対峙には他では味わえない魅力があると再認識できました。とにかく、自分の限界、そして憧れの課題と向き合うことができて、すごく幸せな経験になりました。「ロックランズ」は今までの人生で間違いなくNo.1です。
―――グラミチにはどんな印象を持っていますか?

クライミングというよりは登山のイメージが強いですね。また、世代もあってか、街着としてのイメージもあります。個人的には、「グラミチパンツ」の少しダボッとしたカジュアル感のあるシルエットがめちゃくちゃ好き。もちろんタフさも魅力です。クライミングで使用すると若干膝が伸ばしずらいってのはありますが、ボクは正直見た目で選ぶので全く問題ないです。

―――「ロックランズ」でも愛用していただいたとか?

ずっと穿いてましたね。結構過酷な旅路だったので、大分使用感が出ちゃいましたけど(笑)。でもそれが味になるのもグラミチのよさだと思います。今後もクライミングでも街でもガンガン穿きまくりたいと思っています。
―――島谷さんが所属しているクライミングチーム「ROKDO」について教えてください。

小学生のころからコンペで一緒に戦ってきた村井隆一と野村信一郎の3人で活動しています。お互いに切磋琢磨しながら、高難度の岩場に挑戦し、その様子をYouTubeやInstgramで発信する他、岩場でのボルダリングイベントやコーチングを行っています。

―――「ROKDO」にはどういう意味が込められているんですか?

仏教における「六道」がベースで、六には「六段」や「V16」、「ROCK」などの意味合いを掛けています。また、「六道」という6つの世界を表すのに車輪が使われており、それが自分たちにとって思い入れのあるスイスにある課題「Off The Wagon」の車輪を想起させる点もイイなと思い名付けました。

―――「ロックランズ」へのロックツアーも「ROKDO」で行ったんですよね?

「ROKDO」のメンバーを含めて8人で行きました。いろいろ他にも行きたいところがあり過ぎたんですが、隆一が7年前くらいに一度「ロックランズ」へ行ったことがあって。“岩のスケールが本当にヤバすぎる”ってオススメされたのもあったし、ボクもDVDで何回も見たことがある場所だったので、行こう!って。37日間の旅でしたけど、終わってみれば一瞬。「ROKDO」で行った最初の長期ツアーだったので、なんだか感慨深かったですね。

―――島谷さんは“群れるのが嫌い”と言っていましたが、「ROKDO」での活動では喧嘩とかにはならないんですか(笑)?

(笑)。本来は一人好きなんですけど、「ROKDO」の2人は、気が合うというか、自分と感覚が近いのかもしれません。クライミングにおいては、それぞれタイプが異なる課題が好きなので登る岩場が被ることもないし(笑)。実際、「ロックランズ」へ行ったときも全く喧嘩もしなかったですし、居心地のいい最高のチームですね。
―――最後にクライミングを通して伝えていきたいことについて教えてください。

岩場の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい。今はオリンピックもあってコンペクライマーが取り上げられがちですが、もともとクライミングのルーツは岩場であり、ボクも岩場に憧れてクライミングを始めた身ですから。ただ、クライミングの魅力を伝えるメディアや媒体が少ないので、「ROKDO」がその役割を担えるように頑張っていきたいと思います。

―――期待しています! 個人的な目標についてはいかがですか?

また、来年「ロックランズ」にいきたいですね。登れるかどうかの背戸際だった「フィニッシュライン」を、次は必ず落とします!

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